いのである。
日本で湖水地方が有名になったのは、ビアトリクス・ポターの傑作絵本「ピーター・ラビット」に負うところが大きい。原作が1902年に出版されたこのシリーズが日本で初めて出版されたのは、1971年(福音館書店刊4))のことである。その後、このキャラクターを用いた食材メーカーが提供するTV番組や、子供向けTV番組の放映、食器の普及等が契機となって、ピーター・ラビット人気は一気に高まった。この頃から、湖水地方はピーターの故郷として多くの日本人が訪れる場所となった。
図−3 HillTopの家
2)交通網
ヒルトップ周辺地域の交通インフラは決して恵まれているとは言えない(図−4)。道路は市街地と現地を結ぶ国道が1本、鉄道は幹線路線の支線が入り込んでいるのみであり、ウィンダミア湖を渡るフェリーは遊覧船程度のものであり、いずれも団体の観光客を運ぶためには十分とは言えない。
また、ヒルトップに至る国道も道幅が狭いため、大型バスが集中するトップシーズンには、町の幹線道路に渋滞を引き起こしており、近隣の住民にも不便を強いている。
3)観光地としてのヒルトップが抱える課題
ヒルトップは本来、ナショナル・トラストによって永久に保護され、保存されることを目的とする場所であり、決してマス・ツーリズムの対象地として扱われるべき場所ではない。しかし、そのすぐれた価値は多くの観光客を集める結果となり、トラスト自身がもつ保護と公開のジレンマによって、永久保存への課題を抱える結果となっている。
また観光地としてのインフラが整っておらず、特に交通体系の現状が、後述するような来訪が一時期に集中する観光実態と合わないため、トップシーズンには渋滞が生じている。
図−4 湖水地方における交通インフラ
(2)ヒルトップへの観光入込の実態について、特に過剰利用の実態
1)観光入込の概要
イングランド全体とカンブリア地方における、季節による海外からの観光入込状況の変化をみると(図−5)、両者には大きな違いがあり、カンブリア地方は年間入込の50%以上が夏期に集中している。
図−5:海外からの来訪客による観光時期の割合(1994年)
出展:文献17
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